免許取立てというのは大げさで、外国で免許を取ったこのワタクシは、日本の免許には切り替えていたものの、どうも車線が反対というくだらない理由で、日本で運転するのを躊躇していたのである。
つまり、日本においては、新米ドライバーだった訳である。
飯を食う目的地近くでコインパーキングを探したのだが、どこもかしこも満車状態であった。
しばし徘徊したあと、ようやく一つだけ空いているスペースを発見した。
接近すると、地面から横長の鉄板が斜め上に15センチほどせり上がっていた。
「これ、止めたらまずいんとちゃいまっか?」とこのワタクシ。
「いや、駐車場ってこういうもんやで。車が上を通ると鉄板が下がって、停車すると再び鉄板が上がって、車を勝手に動かせないようにする訳よ」と支障、いや師匠。
いかんせん、このワタクシが免許を取った日本の26倍も面積のある国では、こういうシステムがないどころか、車なんて止め放題だったので、半分疑いながらも先輩の言葉を信じた。
果たして、車は、ガリガリと底を擦り始めた。
挙句の果てに、完全にタイヤが宙に浮いてしまい、鉄板の上で前にも後ろにも動けなくなってしまった。。。
「。。。。。。」このワタクシ。
「。。。。。。」師匠。
とりあえず、コインパーキングの看板に書いてある緊急連絡先に電話をした。
「実は、鉄板に乗り上げてしまって。。。」
「出そうとしたら、再び上がったってことですね?」と係りの人。
「いえ、入れようとしたら、、、」とこのワタクシ。
「えっ、入れようとしたら、その途中に鉄板が上がったのですか?」と係りの人。
「いえ、鉄板が上がっているのに、入れようとして。。。」
「えっ。。。」
係りの人、しばし絶句。
そして、気を取り直して、
「急行しますので、しばらくお待ちください」
我々は、寒いので車の中で待とうとしたのだが、二人合わせて0.2トンの体重が鉄板を押し潰しはしないだろうかと気になって、結局外で待つことにした。
数分すると、小雪が舞い始めてきた。。。
我々を救ったのは、急行してくれた係の人の対応であった。
誰がどう考えても、鉄板の上がっているスペースに突っ込んだのは我々のミスである。
しかし、業者側から見れば、鉄板を倒さずに、つまりお金を払わずに逃げた車がいて(多分、車高の高い車かなんかであろう)、不幸にしてそのあとに来た我々が迷惑を被ったことにしてくれたのである。それはそれで事実なのだが。
係の人は、手際よく鉄板を降ろし、
「ご迷惑をおかけしたので、このまま無料で止めていただいて結構ですから」
と言って去って行った。
こちらがミスったにも関わらず、余計な労力を掛けさせてしまった上にタダになってしまって、もの凄くバツの悪い二人ではあったが、係の人の車が角を曲がった瞬間に「ラッキー!」と叫んで、夜の街に消えたのであった。。。
(関連エントー)
「車のハンドル」
ラベル:自動車