その日札幌で泊まったホテルは、そのホテルの名前を知らない日本人はモグリではないかと思えるほど有名な名前のホテルであった。
そこそこの値段はするのだろうが、このワタクシは、たまたまタダ券を入手していたので、お金の心配をすることなく泊まることができた。(そうでもなきゃ泊まることはないくらいの宿泊料は取っているはずである)
泊まったホテルの電気は、鍵を壁の穴に差し込まないと点かないようになっていた。というか、そういうホテルはある意味普通である。
自分の部屋の鍵を開け、壁の穴に鍵を差して、明るくなった部屋を見渡すと、ご丁寧にLANケーブルもあった。
「とりあえず、メールのチェックでもしてから寝るか。。。」と思い、パソコンの電源を壁から出ているコンセントに差し、LANケーブルも差して、メールのダウンロードを開始した。
ブロードバンドだ!
そりゃそうだ。
とはいえ、約15年ほど前から、世界中で接続方法を模索し続けてきたこのワタクシとしては、LANケーブルがあって、ブロードバンドというだけで感激である。
急ぎの返事だけをしてすぐに寝ることにした。
もっとも、すすきのでフィーバー(?)していたこのワタクシがホテルに着いたのは、もう明け方近くだったので、早く寝ないと翌日(というかもう当日だが)に禍根を残すことになる。
パソコンとiPhoneをUSBで接続し、ほとんど電池の残っていないパソコンとiPhoneの両方の充電を開始してからベッドに入った。
近頃、ほとんどの日本人が毎日する行為の一つは、携帯電話の充電ではないかと思う。
おまけに、このワタクシの携帯電話はiPhoneなので、一日充電を怠ると、翌日には確実に電池が持たない。
ベッドサイドには、電気のスイッチが幾つも並んでいた。さすがに値のはるホテルはひと味違う。。。
ベッドに横たわりながらスイッチを適当に押していると、あっちが点いたり、こっちが消えたりと、まったくどれがどれか分からない。
体を起こして、スイッチの横に書いてある字を確認すると、「メインスイッチ」のようなものがあった。
そのスイッチを押すと、一発で部屋の電気が消えた。
その後のことは覚えていない。。。
1〜2時間経った頃に、けたたましい音で目が覚めた。
ベッドサイドの目覚ましだ。
まだ、6時である。
どうやら、前に泊まった人が設定した目覚ましがまだセットされたままだったようだ。
目覚ましを叩き切って再び横になった。
眠れない。。。
ベッドの中で悶々としているだけで、時間が流れた。
そうこうしているうちに、出発しないといけない時間が近づいてきた。
仕方がないので、ベッドから起き上がり、シャワーを浴び、服を着て出発準備を整える。
最後に、パソコンとiPhoneを鞄に入れようとすると、まったく充電されていない。。。
ベッドに入る前に充電が始まったのを確認していたにもかかわらず、、、である。
その日、飛行機に数時間乗ることになっていたこのワタクシとしては、パソコンのバッテリーがないというのは死活問題である。iPhoneは最悪パソコンから給電できるが、パソコンそのものに電気がなくては、パソコンもiPhoneもどうしようもない。
もしやっ、、、と思って、ベッドサイドの「メインスイッチ」を押してみた。
全ての電気は点いたが、もう外が明るいので、あまり明るくなった感じはしない。
しかし、パソコンのバッテリーランプとiPhoneの充電マークが、明るく輝き始めた。
「メインスイッチ」を切ってみる。パソコンもiPhoneも暗くなる。
一体全体どこの世界に、部屋の電気を消すと壁のコンセントまで消えるホテルがあるのだ。
もはや、再び充電する時間はない。
電気のほとんど入っていない家電製品二つを鞄に押し込み部屋を出た。
フロントのオッサンに小言の一つでも言ってやろうと、事態を説明すると、そもそもこのワタクシの言っていることを理解してくれない。
こっちも時間がないので、「とりあえず、部屋に行って、携帯電話の充電器をセットした後に、メインスイッチを切りなはれ」と言いつつ、「パソコンを持ち歩いている人は少ないかもしれないが、携帯電話を持ち歩くのは普通なんだから、電気とともに充電ができなくなると、クレイムが続出しまっせ。すぐに確認しなはれ」と言い放ち、千歳空港に向かった。
もうちょっと強く言いたいところであったが、いかんせん時間がないのと、タダで泊まっていた引け目から、こちらの発言にはあまりキレがなかったことは否めない。
千歳空港での搭乗前に、iPhoneが鳴った。
少しでも話し込むと、パワーダウンしそうなのに。
「先ほどのフロントのものですが、、、チェック致しましたところ、お客さまのおっしゃる通りでした。この状況では他のお客様にも御迷惑が掛かることは間違いありませんので、至急対処方法を検討したいと思います」
「是非ともそうしなはれ」
「つきましては、このたびは、お客さまに多大なご迷惑をお掛けいたしましたので、当ホテルと致しましては、、、プス。。。」
電池がなくなった。。。
タダほど怖いものはない。
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「ホテルでベッドごと落下。。。」