このブログは、以下のアドレスに移転しました。
http://aomatsunoriaki.com

ぱんちょなゴルフ道

このブログの更新情報をメールで一日一回お届けします

2007年07月25日

東京の空

 なんとなくいつもより長い梅雨は、いまだに終わる気配を見せない。
 それでも今日は久しぶりの快晴。そして、今年一番の暑さになったようだ。

 もう陽も落ちた頃、車に置きっ放しにしてあった荷物を取りに駐車場に向かう。
 この東京の都心部では、駐車場と家が至近距離にあるなんてことは、超の付くお金持ち以外にありえない。
 片道1車線のあまり広くはない裏道の両側は背の高いマンションが軒を並べている。
 つい数年前までは民家が立ち並んでいたというのに、景気が少し良くなってくると、人口の都心回帰と共に、民家はアッと言う間に鉄筋コンクリートに変わってしまった。
 この地域では最後の銭湯も、今では当時の煙突よりも高いマンションになっている。

 そんなマンション群に挟まれた道を歩きながら何気なく空を見ると、東京にしては珍しく、すごく綺麗な半月が輝いている。その横にはこれから沈み行くのだろうか、金星も明るく輝いている。
 昼間快晴だった東京の空には夜になっても雲が出ていないのだろう。
 
 そういえば、星なんてしばらく見ていなかったような気がする。
 子供の頃は、ほとんどの科目が嫌いだった上に理科が特に嫌いだったのに、どういうわけか天体関係の授業だけは好きだった。
 奈良の高校にいたときなんて、まったく汚れなんてないような空に見える全ての星の名前や星座の名前を覚えていたのに、今では金星くらいしか判別できず、北極星や北斗七星ですら見つけることができない。
 これは、空に星がない都市に住んでいるからかもしれないし、大人になってもっと別の何かを得た代わりに失った色々なことの一つなのかもしれない。

 
 高校三年生の夏休み、大流星群がやってくると聞いた僕と彼女は、三重県の青山高原に出かけた。
 その年の流星群が特に凄かったのか、毎年夏には流星群がやってくるのか、今ではよく判らない。
 いずれにしても、僕たちは、高原に行けばより沢山の流れ星が見えるという噂を聞いて、遥々三重県まで向かったのだった。

 高原の芝生に寝そべって二人で空を見ていた。
 文字通り満天の星が我々を照らしていた。もちろん、星なんてそんなに明るいものではない。それでも、「照らす」という言葉がピッタリの夜だった。
 これから出て行く社会なんて知らない10代の僕たちには、未来がこの空のように輝いていたに違いない。
 
 「あっ、流れ星っ」
 「うそっ、どこっ?」
 「あっ、また流れ星っ」
 「どこどこ?」
 彼女は何度も流れ星を見つけているのに僕にはまったく流れ星が見えない。少なくとも僕の方が視力は良いのにまったく僕には発見できない。
 彼女が、「あっ、流れ星」と言うたびに僕の左手と繋がった彼女の右手がピクリと動くのが可笑しくもあり愛おしくもあった。
 「心の綺麗な人にしか見えないのよ」
 彼女は、悪戯っぽく言ったが、何度も彼女が流れ星を見つけても、僕には見つけられない。
 流れ星を見たら色々なことをお願いしようと二人で言っていたのに、結局僕は何もお願いできなかった。
 彼女は、何度も何度も何かをお願いをしたようだが、中身は教えてくれない。
 
 高校生の僕たちは、電車がなくなる時間を気にしながら、去りがたい場所をあとにした。
 少なくとも、あの夜、時間が永遠に止まってほしいと僕は思っていたし、彼女もそう思っていたに違いない。
 彼女の降りる駅の方が先だ。
 何時間も繋がっていた彼女の右手を一度離してしまうと、二度とその右手、そして彼女とは繋がらないような気がした。
 
 大人になって思えば、あの時、あの日、18年くらいの人生で一度くらい、真っ直ぐ家に帰らなくても良かったような気がする。でも、それは大人になったから言えるだけで、あの時点では、そんなことは考えられなかった。
 仮に彼女の右手と僕の左手がその日ずっと繋がったままだったとしても、翌日か、その翌日か、そして、いつかは手を離さないといけないわけだし。

 何も僕たちを邪魔するものがいない宇宙から僕らを乗せてきた電車は、彼女が電車を降りた瞬間にいつもの電車になってしまった。
 彼女はいつまでもホームで手を振っていた。僕もいつまでも手を振っていた。

 その後何事もなかったかのように、夏休みは続き、秋が来て冬が来た。
 彼女と僕の間には何も変化はなかったし、少なくとも何も変わったことはなかった。
 それでも、なぜか別れはいつも突然やってくる。

 あのとき彼女の手を離していなかったら、、、なんて未練がましく思いながら、もう一度空を見上げると既に金星は空から消えていた。マンションの裏側に回ってしまったのだろう。
 と、その瞬間、空に一瞬光が流れた。
 僕の左手は、あの時の彼女の右手のようにピクリと動いた。

 その光は飛行機だった。
 いまだに10代のままの声で、「流れ星は、心の綺麗な人にしか見えないのよ」と悪戯っぽく言う彼女の言葉が頭の中に響き渡った。
ラベル:
posted by ぱんちょなあおのり at 00:11| 奈良 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | ぱんちょな恋の物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
このブログを読んで、先輩が近い将来、“同郷の女性”か“故郷の幼馴染”と結婚しそうな予感が何となくするんですよね。
そこで一つ提案です。
先輩、県人会に参加してみたらどうですか?
接点も多いと思うし、絶対に盛り上がりますよ!
(なんか、えらそ〜なこと書いてゴメンナサイ…)
Posted by 部下 at 2008年09月06日 02:50
部下さま

 最大の問題は、、、
 このブログに書いてある物語は、全て創作であるということですね。。。
Posted by ぱんちょ at 2008年09月07日 02:31
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
>>>ぱんちょなオススメ<<<

熱中!ベランダガーデニング

足跡だらだら日記



あおのり世相をぼやく

ぱんちょな恋の物語

AONORI Flying High
タグクラウド
largestpeniss.jpg toiletexpo2.jpg dualbreasts.jpg 珍写真集。。。